独自栽培と醸造方法

1.製造法を考える
 
熟し具合を見極めて、収穫したらただちに仕込み
 
見晴らしのいいワイナリーの丘に、ぶどう畑に囲まれて都農ワインの工場はあります。2001年、年間20万本の生産体制が整い、大小20基のステンレスタンクと、フレンチオークの樽が130本。冷却ユニットをはじめラベラーまで、先進の設備も備わりました。10月に新酒の赤とロゼを発売するのを皮きりに、翌年2月に赤のエステートとタンク発酵の白、3月に樽熟成の白、4月末から5月にかけて熟成させた赤。これがリリースの年間スケジュールで、エステートは、自社農園栽培のぶどうを醸造したワインのことです。
ワイナリーが一番活気づくのは収穫のとき。その日が近づくと、毎日畑ごとにぶどうの糖度を調べ、天気予報をチェックしてタイミングをはかります。ぶどうの熟し具合がピークに達するその日が、決行のとき。朝日が昇らないうちからスタッフ総出で、一斉に摘み取りが始まります。
その年のぶどうを100%生かすワインづくり
 
大切に手で摘み取ったぶどうは、ただちに工場へ。その日のうちに仕込みにかかります。まず除梗破砕してから酵母を加えて醸し発酵。赤とロゼは発酵後、搾汁機にかけて皮や種を除き、再度発酵させます。白は圧搾後に酵母を加え、果汁だけを低温発酵させます。そして澱引きしてタンクや樽で熟成、最後に精密濾過をして瓶詰めというのが、スタンダードな工程です。
しかしぶどうは毎年でき具合が異なり、同じ年でも畑によって違いがあります。前年のデータがそのまま使えるわけではありません。もとより、私たちはマニュアルどおりのワインづくりを潔しとはせず、そのとき収穫されたぶどうを最高に生かせる醸造方法を検討します。破砕の度合い、搾汁の圧力、醸し発酵の時間。そんな工程のひとつひとつを微妙に調整することで、ワインの生命である香り・味・色は、繊細に変化するのです。さらにはスキンコンタクト、コールドソーク、タンク発酵、樽発酵、樽貯蔵、そしてシュール・リー。最新の設備・機器を使いながらも、つくり手の感や技に左右されることも事実です。醸造家たちの飽くなき探求心を支えてくれるのは、樽の中から聞こえるシュワシュワプツプツという発酵音。胎動にも似たワインのつぶやきに励まされ、ぶどうを100%生かさねばとあらためて思うのです。

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2.表現法を考える
 
スタイルによって変わる色・味・香りのバランス
 
赤ワインには仕込みのパターンがいろいろあり、色と味、香りのバランスをさまざまに表現することが可能です。
都農ワインの新酒「マスカットベリーA」は、尾鈴ぶどうを使って、軽くてフルーティーなスタイルをめざしたワインです。タンニンを引き出さずに色と旨み成分を抽出するために、発酵前に低温で果実を漬けこんでいるのが特徴。鮮やかな色とフレッシュな香りが楽しめます。
一方「エステート」は、自社農園で栽培したマスカットベリーAを使い、豊かな果実味と凝縮味が感じられるワインをめざしました。醸し発酵を長めにして、色やタンニンを十分に抽出。9月に仕込んで10月までタンク発酵、11月から冷却処理をして翌年2月、タンニンがまるく感じられるころリリースします。
そして自社農園で育成する専用品種、カベルネソービニヨンを主体にしたのが「都農ワイン レッド」です。10月までタンク発酵させてから、11月に樽に移して4ヶ月間熟成させ、春にリリースします。ドライでライトなワインです。また2002年には専用品種シラーの収穫量も増え、初めて仕込みができました。リリースできれば、国内初の快挙となります。

多彩に表現できる白ワイン「シャルドネ」
 
アンウッディド、エステート、アンフィルタードと3種類をリリースし、本格的なシャルドネの展開を始めた2001年は、都農ワイン・シャルドネにとって記念すべき年でした。白ワインの貴公子シャルドネを3種のシリーズに仕立てているワイナリーは、国内では稀少です。
ステンレスタンクで低温発酵させ、あくまでもフルーティーに仕上げた「アンウッディド」。オークの樽で発酵・熟成させ、果実味に樽香、複雑味を加えた「エステート」。樽発酵、樽貯蔵したものをそのまま瓶詰めにし、エステートをさらに重厚にした味わいの「アンフィルタード」。フレンチオークのアロマがきいたシャルドネは、手をかけてつくるちょっと贅沢なワインです。樽熟成の間に、乳酸菌によってワイン中のリンゴ酸を乳酸菌に変えるマロラクティック発酵や、アルコール発酵が終えたあとも澱引きせずに旨みを引き出すシュール・リーなどの製法をプラスして、どっしりしたシャルドネの味を引き出しています。
樽はワインにとって大切な容器。材料のオークは産地によって香りが違い、樽だけでもワインの個性が表現できるといわれています。それだけに私たちも樽材の選定にこだわり、大切にメンテナンスしています。けれどもワイン樽の寿命は短く、3〜5年。ウイスキー樽が数十年なのに比べたら、とても贅沢な容器です。この樽の中で半年間、2週間ごとにテイスティングし、熟成具合に応じて温度管理をしていきます。撹拌するたびに確かな手応えが伝わってきて、完成に向けての緊張感が高まります。
このようにシャルドネはいろいろな技法で表現することができ、醸造家にとって興味の尽きないぶどうです。都農ワインでは将来、シャルドネでスパークリングワインをつくりたいと夢を描いています。

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